去る3月31日を持って、同業者のご子息(以降Sさんと称す)が1年間の弊社での修行を終えて、お父さんをお手伝いする為にご自宅の家業に入る事になりました。Sさんは、入社当時18歳で、 療育手帳B2級の軽い知的障がいがありました。(9月には、健常者並みに出来るとの判定で、療育手帳の更新はされませんでした。)

 弊社にとっては、程度は軽いと言っても初めての障がい者雇用。小さい頃からお父さんの仕事を手伝っていて基礎をある程度知っているとはいえ、最初は私自身も社員達も戸惑いの連続でした。仕事には完璧さを求められる事から、Sさんに対して、得意・苦手の個性を見極める前にダメ出しのオンパレードだったり、注意したばかりでも同じ過ちを繰り返したり、同時に2つの事の対応が難しかったりとSさん自身も悩んだ事でしょうし、直接指導に当たった社員達にも苦労と不満の積み重ねであったろうと思われます。

 これは、弊社には周りの社員の為に行動を起こすという『お互いさま』の風土が低かった事(社長である私自身の効率優先主義の弊害です)も大きかったと思います。心優しい社員も当然居りますが、口にすればダメ出しばかりで、Sさんからは感情的に注意を聞く態度になって貰えない者も居たように思います。

 3カ月ほど経ってから、長野障害者職業センターのジョブコーチさんに入って頂き、我々もSさんも悩みや問題を聞いて頂きながら、逆にアドバイスも頂く事が出来ました。やはり、当初から専門家に間に入って頂くべきだったと反省しております。それからは、カウンセラーの方の立てて下さったケアサポートプランに基づいて、目標を決めてその目標に対する進捗を話し合う形式で、社員にも共有して貰って、Sさんの成長を見守って来ました。お互いに試行錯誤しながら、一進一退の成長でありましたが、何とかSさんは1年間勤め上げ、弊社を卒業していく事となりました。

社員会(『関友会』)よりSさんにプレゼントされた記念品です。

 3月31日のSさんの為の合同夕礼では、Sさん本人から周りへの感謝の思い溢れる挨拶を頂きました。また、3月度社長表彰では、Sさんは弊社全員を対象にして「お世話になったから」という理由で投票してくれました。この事からも私の最も大切にしている『利他の心』、『周りへの感謝心を持つ』事が僅かでも根付いて来た様で嬉しく思いました。私からは「弊社で学んだ事を胸に、一刻も早くお父さんの戦力となって、この分野で社会に貢献できる人間になって欲しい。会社は違えど同じ業界の仲間であり、お互いに協力し合い、切磋琢磨し合い、より高みを目指していきましょう!」と述べて送り出しました。
 この分野でしっかりした技術を習得、確立して幸せになって貰いたいと心底思います。弊社を卒業しても、彼の成長を見守っていきたいと考えております。

 この1年間で弊社に芽生え始めた『お互いさま』の風土、これを元に戻してしまうのは勿体ないと感じています。引き続き、障がいのある方に門戸を拡げて、障がい者と共存できる会社を目指していきたいと強く望んでおります。世の中には障がい者が6%以上いるのですから、その状況が会社でも当たり前になる事によって、街で障がい者に普段通りに補助できる事も出来るでしょうし、何より(自分自身や)自分の周りの大切な人が不慮の事故等で障がい者となっても、理解があって頼りになる身内となってくれるだろうと考えます。

 (株)関木工所は、引き続き障がいのある方と共存できる会社を目指して参ります!!